EPISODE ONE

祝福のジャンプに揺れた夜。
――山﨑康晃と『YOKOHAMA STAR☆NIGHT』の記憶――

山﨑康晃がルーキーだった2015年は、『YOKOHAMA STAR☆NIGHT』の開催4年目に当たる。8月18日に始まった対スワローズ3連戦。大記録更新のタイミングと重なった。

山﨑は4年前の景色を思い返す。

「この時期に特別なユニフォームを着て戦っているなということは、学生時代のころから認識していました。こんなに大きな、夏祭りみたいなイベントだと知ったのはプロに入ってから。いつもと違うユニフォームで、球場全体が同じ色に染まる。そういう光景を実際に目の当たりにして、『これがプロ野球なんだな!』と思いましたね」

カード初戦、同点で迎えた8回裏に梶谷隆幸が勝ち越しの場外ホームラン、さらに筒香嘉智がソロで続いて3-1。山﨑は9回に登板して31セーブ目を挙げ、プロ野球の新人最多セーブ記録に並んだ。。

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より鮮明な記憶として残っているのは2日後の8月20日、『YOKOHAMA STAR☆NIGHT 2015』第3夜のほうだ。

同じく大卒ルーキーだった石田健大の先発で始まり、初回に白崎浩之が、3回には嶺井博希がソロを放つ。6回に山田哲人の一発で1点を返され、2-1の緊迫した展開のまま最終回に突入した。

ここでマウンドに上がった山﨑は、各打者との対戦結果まで覚えている。

「三振、三振、ショートゴロですよね。大引(啓次)さんのあと、武内(晋一)さん、最後のバッターが中村悠平さんで」

3つ目のアウトを取った瞬間、新人最多セーブ記録は25年ぶりに塗り替えられた。その時――。

「自然にヤスアキジャンプが起きたんです。メディアの露出もすごく多かったし、記録の更新がかかっていることはファンの皆さんも知っていたんだと思う」

山﨑自身がツイッターを通して働きかけたことも手伝って、『Zombie Nation』の登場曲とヤスアキジャンプは、この夏にはすでに定着していた。

だが、マウンドに向かう時だけでなく、仕事を終えマウンドを笑顔で降りる背番号19に対してもヤスアキジャンプが贈られたのは、おそらく初めてのことだったろう。

この年のスペシャルユニフォームは、光きらめく水面をモチーフとし、選手たちのシルエットがさりげなくちりばめられたデザインだった。同じユニフォームに身を包んだファンたちからの、自然発生的に生まれた祝福のジャンプは、山﨑の記憶に深く刻まれている。

ただ、『YOKOHAMA STAR☆NIGHT』の思い出は、いいことだけではない。プロ2年目、2016年の夏を思い返せば、舌の奥にほろ苦さがよみがえる。

直前のタイガースとのカードで、悪い流れは始まっていた。

8月2日、同点の9回に4点を失い、負け投手に。

8月3日、セーブは挙げたが、1点を失った。

8月4日、2点のリードを追いつかれ、延長に持ち込まれてチームは敗北。

相手がドラゴンズに変わり、心機一転、悪循環を断ち切るつもりで『YOKOHAMA STAR☆NIGHT 2016』第1戦の9回に登板した。

しかし――。

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1点のリードは、2点のビハインドに変わった。山﨑はイニングを投げきることさえできなかった。2戦目、3戦目と9回にセーブシチュエーションが生まれたが、そのマウンドに山﨑が向かうことはなかった。

「初めて味わった屈辱感、悔しさ……。プロに入って5年目ですけど、あの時がいちばん気持ち的にも参っていた。でも、あれも勉強だったんだといまは思えます。成長させてもらえました」

さらに2017年も、似た経緯をたどる。7月30日、東京ドームでのジャイアンツ戦で逆転サヨナラ負けを喫すると、8月2日、ドラゴンズとの『YOKOHAMA STAR☆NIGHT 2017』初戦で2点差を追いつかれ、勝ちを逃したのだ(延長12回引き分け)。

「伏線があるんですね……」

そうつぶやいた後、山﨑は続ける。

「シーズンを通して戦うなかで、疲れの時期って3回ぐらい来る。その2回目が、だいたいこの時期なんです。後半戦に入って少し経って、気持ち的にほっとする部分があったり、暑さによる疲れがあったり。逆にバッターのほうは振れてくる時期でもあるし……」

1年目は、若さと勢いで乗り越えられたのかもしれない。だが2年目、3年目と夏場が苦しむ季節と重なったのは「偶然というより必然」だったと山﨑は言う。

「今年の夏も、厳しい時期が必ず来ると思っています。それを乗り越えなければ、いつまで経っても『絶対的守護神』とは呼ばれない。年間を通して活躍する。それは今年のぼくの目標でもありますし、チームを救える存在になりたい」

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2017年、同点に追いつかれ引き分けとなった試合の次の試合で、山﨑はリベンジを果たしている。わずか1点差の9回、信じ託されたマウンドで、三者凡退。お揃いの“戦闘服”に身を包んだファンの声に支えられ、夏の苦い記憶にけりをつけた。

『YOKOHAMA STAR☆NIGHT』は、選手にとっても特別なユニフォームを着て戦える貴重な機会だ。2018年は登板の機会に恵まれなかっただけに、今年こそ“宇宙への航海”を表現したユニフォーム姿でマウンドに立てる日を、山﨑は心待ちにしている。

「斬新なデザインだけど、ムービー撮影の時に着てみたらすんなり馴染めました。みんなで同じユニフォームを着て、夏を乗り越えたい。自分自身にとっても、思い出に残るユニフォームになればいいなと思います」

灼熱の季節、勝負の季節に設けられたスペシャルな3日間。

星空を、勝って見上げる夜にしたい。