コラム

三浦大輔監督インタビュー
「苦しいときほど、チームの心を一つに」

2021/03/15

 桜の蕾とともに、高揚感は日に日に膨らむ。

 3月26日、きっとその日、ペナントレースの号砲は鳴る。予想はできても予知はできない143試合の始まりまで、あと少しだ。

 2021年のベイスターズは、三浦大輔新監督のもとで戦う。オープン戦の序盤5試合、横浜スタジアムで指揮を執り終え、胸中を明かす。

「特に外野のポジション争いをしている選手たちの状態がよくなってきて、どうしようかなって、いい悩みがありますね。もちろん、反省点も毎日ある。送りバントのサインを出して、成功したけど、点が入らなかった。じゃあ強攻したほうがよかったのかな、とか。そういうことは常に浮かんできます」

 春季キャンプから取り組んできた明確なテーマの一つが、得点力の向上だ。とりわけ、チャンスを広げる盗塁を積極的に仕掛けてきた。

 その進捗度合いについて、三浦監督は言う。

「(得点力向上の)手ごたえはまだまだ。スチールの成功率も低いですしね。キャンプのときから、全員に(自分の判断で盗塁を企画してもよい)“グリーンライト”を与えていましたけど、横浜に帰ってきてからは“グリーンライト”を持たせるのは一部の選手だけに絞り込みました。ただ、成功率が低いからといってやめるのではなく、1つ先の塁を狙う意識は持ち続けてもらわないといけないし、シーズン中にもそういう意識を植えつけられるようなアプローチはしていきます」

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本人が語る“三浦野球”。

 就任1年目の指揮官の采配に、ファンやメディアは注目している。ここまでは盗塁やバントなどの試みが目についたこともあり、機動力重視、あるいはスモールベースボールといった印象を抱く人も少なくない。

“三浦野球”とはいかなるものか――。そう尋ねられ、当人は悩みながら言葉を紡いだ。

「どうしてみんな、そうやって型にはめたがるのかな、とは思います。攻撃野球なのか、スモールベースボールなのかって。やる前から『この型でいく』ということはない。状態がいい選手を使う。バッティングのいい選手が多いときはより攻撃的な戦い方になるでしょうし、足が速い選手、守備範囲が広い選手が主体のときは小技やサインプレーを多用しながら攻めるでしょうし……」

 心の奥のほうに秘めていた思いに指先が届いたかのように、少しだけ口調が強まる。

「あの……型にはめたくないんですよ。仮にスモールベースボールって掲げたら、走らなきゃいけない、バントしなきゃいけない、という考え方になってしまう。でも『何かをしなければならない』というのは、絶対によくないと思うんです。『え、何で?』って、ぼくの中ではクエスチョンマークが出てくる。だから、臨機応変に、いろんなパターンを持っておきたいなという思いはありますね」

 決めつけないこと。いうなれば「先入観の否定」が“三浦野球”の根底なのだろう。

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 先発投手のローテーション争いに話が及んだときも、それは垣間見えた。「ローテ入りの6人はどうなるか」との問いに、笑みをこぼして三浦監督は言ったのだ。

「まず、『何で6人なの?』というところですよね。たしかに結果的には6人でローテを回すことになるだろうと思いますけど、当初は5人にするという頭もありましたよ。要するに、中5日。その場合は火曜日に投げたピッチャーが(次の番が日曜日になり)中4日になってしまうので、そこに6人目のピッチャーを入れる、とか。対戦カードや、いろいろなシミュレーションをした結果、スタートは6人で行こうという話になりましたけど、シーズンのどこかで中5日で行ってもらうことも頭にはありますし、それをイメージして準備しておいてほしいと、選手やコーチには伝えてあります」

開幕の舞台に立つのは誰か。

 オープン戦の最初の5試合で先発を想定して起用されたのは、京山将弥、平良拳太郎、濵口遥大、上茶谷大河、大貫晋一、阪口皓亮、入江大生の7人。開幕ローテの6人、そして開幕投手は、ここから選ばれる。開幕戦のマウンドを託す条件は、「1年間、しっかりローテーションを守ってもらえる投手」。誰がその評価を得たのかは、すぐに明らかになるだろう。

 リリーフ陣は、E.エスコバーを欠く現状、8回を石田健大、9回を三嶋一輝に任せるのが勝ちパターンのプランだ。

 野手の陣容に目を移すと、コンディション重視の起用方針とは別枠に置かれているのが、佐野恵太と宮﨑敏郎の2人。過去、A.ラミレス前監督はJ.ロペスを30打席連続無安打でも起用し続けたことがあったが、たとえば佐野が同じ状況になったとき、三浦監督はどうするのか。間を置かず、答えた。

「使う、と思います。ケガなどがからむ状況でなければ。佐野と宮﨑の2人に関しては、その打席でヒットが出る、出ないだけの問題じゃない。打線の前後とのつながり、影響も含めて考えなければいけないですから」

 冒頭の言葉にあったとおり、外野手はアピール合戦が活性化してきて、「選択肢があっての悩み」の最中。内野手も、宮﨑がいるサードを除いて、競争が続く。

 その内野手の一人として、実戦を重ねるなかで頭角を現してきたのが、ルーキーの牧秀悟だ。「大学日本代表の4番」という肩書を引っ提げて入団してきた強打者。三浦監督の評価は高い。

「コースに逆らわないバッティングができる、柔軟な選手だなと思って見ています。内に来たボールはしっかり引っ張れるし、外に来たボールは引っかけずに逆方向に打ち返せる。選球眼もいい。あとは、ファウルの仕方というか。見ていると、体勢が崩れず、しっかりと踏み込んでのファウルが目立つんです。イメージしていた以上の、新たなものを見せてくれているなと」

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開幕戦は「ハートで戦ってほしい」。

 外国人選手が入国できない状態が続いており、選手のやり繰りは決して楽ではない。彼らの不在はチーム戦力に与える影響が大きく、当初の想定とは異なる戦い方も必要になってくるだろう。

 それでも、三浦監督はからりと言う。

「『困ったなあ』って言ってても、どうすることもできませんからね。現役のころからそうでしたけど、自分がコントロールできないことを嘆いても仕方がない。いま、いろいろと言われていますけど、じゃあやってやろうじゃないかって。外国人が来るまで、おれたちはやれるんだってところをみんなで見せてやろうぜ、と。それこそ、結束。チームスローガンの“横浜一心”ですよね。苦しいときほど一致団結、チームの心を一つにして、やってやろうぜという気持ちです」

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 オープン戦は5試合を残すのみ。公式戦本番をより意識した采配にシフトしつつ、「いい加速をつけてシーズンに入っていきたい」。

 勢いよく乗り込む先は、開幕戦の舞台、東京ドームだ。待ち受けるジャイアンツとの3連戦を見据え、熱い言葉を並べた。

「シーズン最初のマウンド、打席、守備というのは、みんな独特の雰囲気を味わうもの。しかも相手は去年のセ・リーグ覇者ですから、ハートで、気持ちで戦ってほしいですね。もう練習はしてきたので。闘争心を持ってどんどん攻めていってほしいし、自分自身も攻めていきたいなと思います。結果を考えずに、思いきっていくだけです」

 背番号81のユニフォームで監督としての一歩を刻む日まで、残り11日。新たな指揮官とともに戦うチームは、どんなスタートを切るだろうか。