NEXT STAR PLAYER #8

<2020年ファーム総括>
三浦大輔&万永貴司
「成長の確かな手応え」

2020/11

 2020年、三浦大輔はファーム監督を務めた。重責を担ったシーズンを、こう振り返る。

「監督として1年間ベンチに入って、守りだけじゃなく攻撃のほうも、(イニングの)表も裏もずっといろいろなことを考えながら試合をしていました。ただ、考えても、考えたとおりにはならないですし、そのなかで速やかな決断を下さないといけないところは大変でしたね。自分自身もすごく成長できた。いろいろと勉強できた1年でした」

 若手を率いる立場として何より大切にしてきたのは、ベンチの雰囲気だ。試合では勝ちにこだわりながらも、「暗い雰囲気にはしたくなかった」。ミスをして帰ってきた選手に怒りをぶつけることはせず、コーチ陣と連携しながら、丁寧なコミュニケーションを心がけてきた。

 選手はそれぞれに成長したが、変化していく様子が印象的だった一人として、2年目の伊藤裕季也の名前を挙げた。

「去年の後半、一軍に上がってホームランを打って、今年はステップアップの年だと思っていたところでファームスタート。どこか集中していないように、周りからはそう見えてしまうところがあった。コーチといろいろ話したり、ぼく自身も本人と話をして」

 三浦は、伊藤裕にこんな言葉を伝えた。

「周りは見てないようでしっかり見てる。自分の行動に責任を持たないといけない。結局は自分が損をする。どんなときでもスキを見せるなよ」

 以来、会うたびに「スキを見せるな」と言い続けた。三浦が見るに、伊藤裕は変わり、前向きな姿勢を周囲に示すようになった。

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 投手陣で顕著に伸びたのは阪口皓亮だ。三浦は言う。

「ファームで規定投球回を投げて、去年よりも今年という形でしっかりとステップアップできた選手だと思います。ストレートの走り、キレ、角度もありますけど、緩急というか、常に全力ではなく強弱をつけた投球ができるようになりつつある」

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 昨シーズンまでファーム監督を務め、今年はファーム総合コーチとして三浦を支えた万永貴司も、今シーズンの筆頭成長株として阪口に言及した。

「昨年までは連打を浴びて大量失点したり、フォアボールで自滅したりということがありましたけども、投球の幅ができた。すべてにおいてレベルアップして、ファームではちょっと別格になってきたかなという印象があります」

 打者ではどうか。三浦と万永が揃って挙げるのは細川成也だ。イースタン・リーグでは、本塁打、打点、出塁率でトップの成績を残した。阪口と同じく「ファームでは別格」との評を与えてもいいだろう。

 万永は言う。

「入団してきたころから、年々よくなっている。若いころはもろさがありましたけど、低めの変化球のボール球を振らなくなった。フォアボールもリーグでいちばん取ってますし、ミートの確率が非常に上がりました。一軍で勝負するだけの力はもう備わった。どれだけやれるのか、楽しみしかないです」

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 捕手では、3年目の山本祐大が存在感を高めた。特徴である肩について、三浦は「強さ、正確性で12球団トップクラス」、万永も「群を抜いている」と称賛する。

 上記以外に期待する選手は誰かと問われて、三浦は「いっぱいいますよ」と笑みを浮かべる。

「関根(大気)は、今年は上がるチャンスがありませんでしたが、自分のやるべきことを見失わずにやっていました。宮本(秀明)も、あれだけのスピードがありますからね。一軍に上がる選手には『結果はどうあれ、中途半端なことはするな。やってきたことをそのまま出せばいい。力は勝手に出るから』と伝えていますが、宮本には『一個は盗塁を決めてこい』と言いました。森(敬斗)は高校生離れしたスピードとスター性を兼ね備えていますし、同級生の田部(隼人)もおもしろい。当たりはよくなくても野手の間に落ちて結果がついてきたり、不思議な選手ですね。知野(直人)は、ここっていうところでホームランを打つし、2年目の益子(京右)はいいキャラしてますし。ルーキーの東妻(純平)はプロの壁にぶち当たってますけど、負けん気の強さを見せてくれています」

 選手の名前を並べながら、三浦はどこかうれしそうだった。それぞれに課題を抱え、苦しみながらも、ファームが一体となって歩を進めてこられたことへの充実感がにじみ出ていた。

 万永の言葉が印象的だ。

「監督は、常に選手目線でケアをして、何が起きても選手を守ってあげようという姿勢をすごく感じました。コーチの意見もよく聞いてくれて、みんなで考えて何かに取り組もうとするところは、ファーム全体として非常にやりやすかった」

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 三浦が今シーズンの最も印象的な試合に挙げたのは、10月28日、ライオンズとの最終戦だった。9回裏に同点に追いつき、2点を勝ち越された延長10回、3点を取り返してサヨナラ勝ちした。三浦は言う。

「選手たちには最後まであきらめない姿勢がありました。ベンチの雰囲気を大事にするという春先から続けてきたことが、ああいう劇的な勝ち方につながったのかなと思います」

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 少し声のトーンを落とし、こう続ける。

「ベンチも、スタンドのファンの方も、いろいろと思うところがありながら試合をしていたなとも思います。ドラフトで入ってくる選手がいれば、辞めていかなければならない選手も出てくる。そういう世界だからこそ、一日も早く一軍で活躍するためには何が必要なのかを、ファームの選手には考えながら過ごしてほしい」

 11月8日には「みやざきフェニックス・リーグ」が開幕する。2021年、決して多くはないチャンスをつかみ取るのは誰か。夢に挑む選手たちの戦いはまだまだ終わらない。