NEXT STAR PLAYER #7

いつか、日の丸を背負う投手に
――反骨の九州男児、浅田将汰

2020/9

 外はすっかり暗くなっていた。

 2019年10月17日――。ドラフト会議が始まってから、もう2時間ほどは経っただろうか。熊本・有明高校のパソコン室に控えていた18歳は危機感を募らせていた。別室に報道陣を待たせていた。

「指名が終了していた球団も結構あったので……『これはヤバい、どうしよう』って思っていたら最後の最後に名前が呼ばれて。びっくりしました」

 ベイスターズが7位で指名したのは、浅田将汰(そうた)。最速149kmを誇る右腕は、幼いころからの夢だったプロ入りを果たした。

 小学2年生のころ、親に連れられヤフードームでプロ野球の試合を見たのが始まりだった。最初は内野手だったが、小5のときにピッチャーになった。中学時代は九州選抜として世界大会出場を経験した。

 高校は、出身地の福岡を出て熊本へ。進路に選んだ有明高は甲子園に出たことがない。県下の強豪校に立ち向かい、母校を初の聖地へと導くことを自らの使命とした。

 入学後の浅田の成長は目覚ましかった。最高球速の推移がそれを物語る。

「高1のころは135kmくらいで、その年の秋には145kmが出ました。高2の夏が終わったあとの練習試合で148km、高3のころは149km。1kmしか増えてないんですけど、キレはよくなっていたと思います」

 ただ、甲子園への道は険しかった。

 すでにエースナンバーを背負っていた高2の夏は、県大会準々決勝で負けた。決勝点は、浅田が与えた押し出し四球によるものだった。

 高3の夏は準決勝まで勝ち進み、甲子園の常連、熊本工業と戦ったが負けた。

 いずれの敗戦も浅田は完投。スコアは0-2で、失点には四球が絡んだ。

 苦い結果とは裏腹に、浅田は清々しく振り返る。

「最後の夏は、絶対に甲子園に行けると思っていました。ライバルの熊本工業と、ロースコアのいい勝負ができた。フォアボール絡みで点を取られてしまって、これまで野球をしてきたなかでいちばん悔しかった。でも、いちばん野球を楽しめたのも、その高3の夏だったなと思います」

 背番号54を与えられ、プロの世界に足を踏み入れた。

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 春季キャンプでは、股関節にしっかりと体重を乗せた、バランスのよいフォームづくりに取り組んだ。開幕延期に伴う自主練習期間は、制球、特に変化球の精度向上がテーマだった。

 努力が形になるまでには時間がかかった。

 6月2日の、マリーンズとのファーム練習試合。浅田は制球を乱して満塁のピンチをつくると、甘く入った直球を痛打された。「いちばん苦しかったというか、大変な時期でした」。

 イースタン・リーグ開幕後も、5度の登板(うち4試合で先発)を重ねて勝ちはつかない。大量失点することはなかったが、19回2/3を投げて16四死球と、制球面に課題は残っていた。

 実戦を通して感じたことを、19歳はこう語る。

「プロのバッターは三振が少ない。ボールに対しての当て方がすごくうまいなと感じました。1打席目は打ち取れても、2打席目以降はしっかりと対応してくる」

 成長の手ごたえを得るのは8月22日のマリーンズ戦だ。先発した浅田は6回を投げて被安打2、与四球1、無失点の好投を見せ、6度目の登板にして初勝利。同29日のファイターズ戦も6回を1失点にまとめ、2勝目を挙げた。

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「あのロッテ戦は、自分がいちばん大事にしてきた制球面がすごくよかった。そのおかげで勝てたし、次につながるような投球ができました。2つ勝つことができて自信にはなりましたけど、相手も自分のことを研究して試合に臨んでくるので、それを上回るような投球をしたい」

 自らの性格については、「負けず嫌いです」ときっぱり言う。

 ライバルは誰かと尋ねられ、同じ福岡出身の先輩の名を口にした。

「ベイスターズのエース、今永(昇太)さんにはライバル心というか、絶対に追いつきたいと思っています」

 夢を大きく描くのが、この若者の流儀なのだ。

 2019年、浅田は侍ジャパンU-18に選出された。「(全国の高校球児)17万人の中の20人」に入ったという自覚、そこで同世代のトップ選手たちとともに戦った経験が、その視野をさらに広げさせた。

「今年の目標は土台づくり。ファームで体や技術についてしっかりと学んでいく。野球人生トータルでいえば、日本のエースというか、日の丸を背負うような投手になることが目標です」

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 一軍での登板に関しては「いまはファームで経験を積むのが大事」としながらも、「どこまで通用するか、一回試してみたい」と本音がこぼれた。

 仮に強打者たちに跳ねのけられたとしても、その経験は負けず嫌いの男の心に火をつけるはずだ。

 ドラフト最下位指名からの逆襲――。本人だけでなく、ファンもまた、そんな未来を楽しみにしている。