10月24日、CREATIVE SPORTS LABにて「YOKOHAMA PARK LIFE #1-公園からまちが変わる!?」と題したイベントを開催しました。
横浜国立大大学院都市イノベーション研究院准教授の野原卓さんと、南池袋公園を仕掛けたランドスケープ・プラス代表の平賀達也さん、アウトドアフィットネスを軸としたコミュニティパーク運営を手がけるBEACHTOWN代表の黒野崇さんの3人によるトークセッションで、公園をはじめとする公共空間がまちを変えていく未来像を語り合いました。
野原さんは、「みち」と「ひろば」というキーワードを掲げ、日本型のパークライフ像を考察しました。
公共空間を、人が移動するための「みち」の要素と、余暇のための「ひろば」の要素で整理し、日本ではその双方が混じり合う「曖昧さ」や、つながっていく「連続性」があることを指摘。具体例として、明治神宮の神社周辺を内苑、神宮球場周辺を外苑と位置づけて両者を結ぶパークシティ構想があったことや、「外国人が安全に歩ける遊歩道」として寺院と競馬場を周遊する形でつくられた根岸森林公園などを紹介しました。
「象の鼻パーク」「横浜公園」「大通り公園」などにより、まちの広場と港をつなぐ都市がつくられてきた横浜の関内周辺にも言及。そうした空間の利活用にあたって、毎年11月に多様なイベントが同時開催される「関内外オープン」を「緩やかに連動した形」の好例として挙げ、「ちゃんとした中心がありながら、間口も広く、多様な関わり方ができると良い」と強調しました。
「『ひろば』と『みち』の境界が曖昧になることで、まち全体がつながっていく」とした上で、「公園の利活用を考えることは、まちとのつながりのあり方を考えること」とまとめました。
平賀さんは数々のランドスケープデザインを手がけてきた経験から、「公共空間は、豊かな生活や文化を生み出す社会基盤」として、南池袋公園をはじめとした豊島区の取り組みから、地域の”社会的共通資本”としての公園の価値と可能性について語りました。
豊島区庁舎の屋上に整備した「豊島の森」は、かつての地形や生態系を調べ、植生や小川を再現したことにより、地元児童の学習場としての価値が生まれたことを紹介。かつては湧水があり、神聖な場所でもあった土地の歴史を踏まえることが、新たな価値創出につながることを説きました。
都市型公園の先進事例として注目を集める「南池袋公園」の整備過程も紹介。治安が悪くクレーム対象だった公共空間が、今では人材が集まるきっかけとなり、好循環の連鎖につながっているそうです。南池袋公園だけでなく、池袋西口、中池袋、造幣局跡地の4つの広場をループ状につなぐ道路についても言及し、どういう未来があるのかを示すマスタープランの重要性も強調しました。
黒野さんは、公園をはじめとするさまざまな場所で拡大してきたアウトドアフィットネス事業の事例の数々を紹介。環境や立地、制度などを踏まえ、利用者ニーズと合わせて事業化することで、公園がさらに暮らしの豊かさを高める場となることを示しました。
2007年に葉山市の海岸でのビーチヨガからスタートした事業は現在、各地で300~500人の会員を集めるようになりました。黒野さんは「社会のスピードが上がることで、自然体験や運動へのニーズが振り子のように揺れている」と背景を分析しました。
運動による公共空間の活用は、自然発生するランニングのような事例もありますが、やはり環境整備が大切になるとのこと。ランニング活用を促進するロッカーやシャワー、特に女性が気にする日焼けの対策、シーカヤックよりも親しみやすいSUPなどの仕掛けを、実際の事例から紹介しました。
公園などでおこなうヘルスケアコンテンツは、個人の未病対策や体調維持だけでなく、コミュニティの形成や促進、環境保全への意識高揚にもつながるとして、「自分の命、社会の命、地球の命の3つが健康になる」とまとめました。
ディスカッションの冒頭では、DeNAのスマート・ベニュー推進室に所属する田中俊郎が、横浜市で取り組むスポーツタウン構想の全体像を説明。「持続可能なまちづくり」「モビリティ・マネジメント」「交流人口拡大」「ウェルネスの追求」の4つのテーマに向けた公共空間活用を促進していく方針や、横浜スタジアム周辺の公園は利用者の大半が通行を目的としている現状を共有しました。
これを受けて、議論は「公園の中をどうするか、だけでなく、公園をまちのなかにどう位置づけるか」という方向に進みました。
野原さんが「まちの誇りやアイデンティティ、まちと関わる余白になる。そして、アウトドアフィットネスのようなプログラムが場と人をつなぐと、爆発的な価値が生まれる」と整理すると、平賀さんが「誇りを醸成するために、まちの宝を掘り起こしたり、スポーツなどをまちの宝にしていくことが、成熟社会になるほど大事になる」と地域に根ざす重要性を説き、黒野さんも「たとえばヘルスケアも、主流となりつつあるICTばかりでなく、もっと地域特性を生かしたリラックスできるプログラムがあっても良い」と同調しました。
このほか、人口減社会に進み社会が変化していく中でさまざまなプログラムの受け皿となるために公共空間が”ゆるさ”を残すことや、公園と生活が地続きである当事者意識を醸成していくことの重要性についても語り合いました。
場としての公園と、繰り広げられるプログラムの連動によって、まちが変わっていく。そんな横浜の未来像を考える端緒を掴むイベントとなりました。
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