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FOR REAL-in progress-

主砲であり、キャプテン。筒香嘉智が背負うもの。

「FOR REAL-in progress-」
2018.8.20

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。
“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。

 長く続いた酷暑が唐突に終わり、早くも秋を思わせる涼しい風が吹き抜けた8月の半ば。名古屋で1勝2敗と負け越したチームは横浜に戻り、カープとの3連戦を戦った。

 8月17日の初戦、先発の東克樹が4失点ながら7回までを投げ抜いて、味方の援護に望みを託す。8回は三嶋一輝が、鈴木誠也から始まるカープの攻撃を3人で終わらせ、リズムを生む。あるいはこれが、反攻のファンファーレだったのかもしれない。

 8回裏、突破口を開いたのは、今シーズン初めて「1番・センター」に入った大和だ。5球目をライト前に運んで出塁すると、7試合ぶりにスタメン起用された柴田竜拓がセンター前に弾き返し、J.ロペスもチームバッティングでつないだ。

3点ビハインドの終盤、ノーアウト満塁。打席には、4番・筒香嘉智。

 これ以上ない、完璧なお膳立て。野村祐輔がマウンドを降り、救援の一岡竜司が投球練習をする間も、円型の闘技場に熱気は満ちた。

 大声援に四方を囲まれながら、ただこの男だけは静寂の中にいた。筒香は言う。

「ホームランが出れば逆転だということはもちろんわかっていましたけど、それは向こうもわかっていることだし、ホームランを打たせないように投げてくる。だからホームランを狙いにいってはいません。打てればいいなとも思わなかった。ただ強い打球を打ちにいく、それだけです」

 気持ちの高ぶりもない。いつもの打席と同じように、いけると思った球にバットを出し、直径7cmほどの白球に強くコンタクトすることが唯一のミッションだった。

この試合の第1打席でキャッチャーへのファウルフライに終わった筒香は、第2打席からバットを変えた。形も重さもメイプルの材質も同じだが、バットによって微妙に固さが異なるという。第1打席で微妙な感覚のずれを察知し、第2打席からはより固いバットに。研ぎ澄まされた繊細な感覚と、それに基づく微細な修正。勝負が懸かる打席の伏線は、そこにあった。

 バッターボックスを前にして、ぴょこんと飛び跳ねる毎度のルーティン。自身の体の重心のありかを確認してから、ゆったりと身構える。

 カープの捕手、石原慶幸は外角いっぱいにミットを構えた。だが一岡の投じた146kmのストレートは狙いよりもやや内寄り、ストライクゾーンの低めに――。

 直後、高速で振り抜かれたバットは乾いた音を発し、打球は低い弾道を描いてあっという間に右翼席に到達した。背番号と同じ第25号は逆転満塁ホームラン。興奮のるつぼと化した横浜スタジアムのダイヤモンドを、それでも淡々と筒香は走り抜けた。

 快打の感想を求めても、拍子抜けするほどそっけない。

「ホームランが出れば理想だったので。打ててよかった」

 宮﨑敏郎が、N.ソトが、後に続いた。試合をひっくり返す3者連続のホームランは、1年前の夏の記憶を呼び覚ます。

 筒香の2ランを号砲に、ロペス、宮﨑の3連発でサヨナラ勝ちしたのは2017年8月22日のカープ戦。次の日も、その次の日もサヨナラで劇的勝利を重ねたチームは勝負の秋に向けて勢いをつかんだ。

8月の横浜スタジアム、対カープ。昨年の熱狂を誰もが期待したが…

 しかし、その再現はならなかった。

 18日は、またしても3点ビハインドの8回裏に満塁のチャンスをつくったが、あと一本が出なかった。

 19日は、7点ビハインドの8回裏に、プロ初打席の山本祐大が2ラン、さらにソトにも2ランが飛び出し、9回裏には宮﨑のソロで2点差に迫る。カープのクローザー、中﨑翔太を攻め立て2アウト満塁までこぎ着けたが、やはり追いつき追い越すにはあと一歩、届かなかった。

 思えば、8月3日のカープ戦、倉本寿彦の一打でサヨナラ勝ちしながら、カードの残り2戦に連敗した。8月14日のドラゴンズ戦も9回に2点を奪う粘りで逆転勝利しながら、その後2連敗。つかんだかに思えた勢い、流れが、次の試合に持続しないのがもどかしい。

 筒香は言う。
「たしかに、今年はそういうのが多いですね……。原因はたくさんあると思いますけど、いちばんは実力が足りないということ。でも、チームの雰囲気やまとまりはよくなってきていると感じます。もう余裕なんかあるわけないですし、目の前の1試合に全力で勝ちにいくしかない」

 実力が足りない――それは自身に矛先を向けた言葉でもあるのだろう。

打率.297、25本塁打、66打点という数字の並びに、胸を張れるものはない。

「すべてにおいて物足りない。8月は.333という打率になっているけど、それくらい打てている感覚は自分にはありませんし……。今シーズンはずっと、よくもないし、悪くもない、そんな状態が続いています」

 なんとか自身の状態を上向かせる試みを続けつつ、チーム全体にも目を配らねばならないのがキャプテンとしての筒香の務めだ。

 なかなか安定したパフォーマンスを発揮できずにいる先発投手陣、そのリーダーになるべき左腕とのやりとりを明かす。

「ケンタ(石田健大)とはよく話をします。彼も、誰が見てもわかるとおり苦しんでますし、たとえば配球についてだったり、聞いてきたことに対しては答えるようにしています。投げては抹消というケースが多いので、『自分のやるべきことをやっておけば大丈夫だよ』と伝えました。何かきっかけさえつかめれば、(いい時の状態に)戻ると思う。最後、大事な時期に必ず必要になる戦力だし、いい状態で戻ってくることをみんなが期待している。彼も絶対にその期待に応えてくれると思っています」

 19日、必死の追い上げも及ばず敗れた後、A.ラミレス監督は言った。

「初戦を取ってから連敗するパターンが多いが、必ず変わってくる。我々は必ずよくなる。当面は2位が目標になると思うが、そこを目指してベストを尽くしていきたい」

 貯金21の首位カープには、優勝マジック28が灯る。

 だが2位以下はいずれも借金を抱え、5位のベイスターズから2位のスワローズまでは5.5ゲーム差だ。残り37試合、一つでも上の順位に食い込むための勝負どころは必ずやってくる。

 筒香が明かす。

「みんなを集めて話すような機会をつくることは計画しています。時期はチーム状況にもよって前後しますけど、この先、必ずヤマ場がくると思うので」

 今週は、3位ジャイアンツ、2位スワローズとの6連戦だ。上位浮上のためには何としても勝ちを重ねたい、重要な1週間になる。