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FOR REAL-in progress-

突然届いたトレードの知らせ。ー故郷と同じ港町で誓う新たな道ー

「FOR REAL-in progress-」
2017.7.17

 優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。
 “in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。

 トレードの知らせはいつも前触れなくやってくる。
 7月6日、ベイスターズの12年目捕手、黒羽根利規は札幌を新天地とし、ファイターズの助っ人左腕、エドウィン・エスコバーは蒼き星の一つに加わった。
 ベネズエラ出身の25歳はさっそく8日のドラゴンズ戦で8回に登板。三者凡退で新たな一歩を踏み出すと、12日のカープ戦では4回から3イニングのロングリリーフを無失点で全うする。同郷のA.ラミレス監督から授けられた「自分に何ができるのかを証明しろ」との助言にまずは応えてみせた。

 レッドソックスやダイヤモンドバックスでメジャーのマウンドを経験し、今シーズンから遥か遠い異国に活躍の場を求めた。
 エスコバーは言う。
「日本に来ることは自分が下した決断。代理人との2時間の電話で決めた。メジャーになかなか定着できなかった自分がプレーヤーとしてもっと成長するにはそれがベストだと思ったし、そんなに難しい決断ではなかったんだ」
 1年目の外国人選手がトレードの対象となったのは史上初だ。来日から半年足らずで違う色のユニフォームを着ることになるとは想像していなかったが、心はそこまで乱れなかった。
「たしかに驚いたよ。まさか自分がって。でもトレードは(アメリカで)何度も経験しているし、トレードされたからといって自分が歩むべき道は変わらない。だから、前に進もうとすぐに切り替えられた」
 左腕から繰り出されるストレートは軽く150kmを超える。そこに自身の強みがあると自覚している。
「パワーピッチャーで、ほかにいないタイプだと思っている。日本のバッターは小さくて、ボールへのコンタクトがうまいから、なかなか三振を取ることができないけど、それでいいんだ。それもまた自分を成長させてくれる」
 そして落ち着いたトーンながら、少しだけ力を込めてこう続けた。
「勝つためにベストを尽くしたい。負けるのは大嫌いだから。負けて、相手が自分のことを笑ってる、なんていう状況には本当に耐えられないんだ。プレーオフ(クライマックスシリーズ)に進出できる順位にはいるけど、その先の優勝を目指して全力でやっていきたい」
 トレード成立の直後から広島、名古屋とビジターゲームが続き、荷物を取りに行くためにいったん札幌に戻る必要もあった。新たなホームタウンで過ごした日数はまだ片手で数えられる程度だ。
「横浜のことは全然わからないんだ(笑)。でも、この天候は好きだよ。暑いけど、ベネズエラに似ている。海も近いし、いつかビーチに行ってみたいね」
 波乱万丈の野球人生にも動じないエスコバーはそう言って、一瞬、若者らしい表情を見せた。

 シーズン前半戦、右のリリーバーとして首脳陣からの信頼を着実に積み上げてきたのが加賀繁だ。
 体を深く沈みこませながら投げる変則のサイドスロー。これまでは対右打者へのワンポイント起用が多かったが、今シーズンは対左打者の被打率が.107と、際立った成績を残している。
 加賀は言う。
「コーチ陣からは『右をちゃんと抑えてくれればいいよ』と言われてましたけど、自分としては、どうしたら1イニング投げられるのかなと考えていました。そのためにはやっぱり左も抑えないといけない。どうやって抑えようかと、ずっと考えていました」
転機となったのは昨シーズン、キャンプ中に患った右ひじの靭帯損傷だった。ファームでリハビリを続ける中、不穏な思いが頭をよぎった。
「前の年も全然ダメで(2015年は9試合の登板にとどまる)、GMにもハッパをかけられていたところでの故障でしたから……。このまま治らなかったら終わってしまうんじゃないか、ということをすごく感じながらリハビリしていました。1試合でもいい、消化試合でもいいから、また一軍の試合で投げたいと。そう思い始めたところがターニングポイントだったのかなと思います」
 ようやく投げられる状態にまで回復して、左打者対策に乗り出した。
「いままでずっと外に投げていましたけど、インコースや高めを使ったら、次のまっすぐにどんな反応をするんだろうなと。ファームのコーチやキャッチャーと相談して、ちょっとずつやっていきました。そうすることで外が広く使えるようになるし、ファウルもとれるようになってきた。(バッテリーを組んでいた)西森からも『形が見えてきましたね』と言われて、一つのパターンができてきました」

 自信を取り戻しつつあった昨シーズンは26試合に登板し、今シーズンは登録を抹消された時期がありながらもすでに22試合に登板した。試合の流れを左右する場面での起用が増えていることには「やりがいがある」と語る。
 旧知の友人には、そんな姿にこれまでと違う頼もしさが見えるのだろう。
「最近、テレビで見てくれている大学の同級生から言われたんですよ。落ち着いたねって。堂々としてるねって」
 3児の父でもある30歳は、気負わず、しかしたしかな熱を胸に秘めて後半戦もマウンドに立つ。
「数字の目標なんてありません。もう欲はないですよ(笑)。とにかく、ブルペンの電話が鳴るようにと、それしか考えていない。(電話が鳴ると)ドキッとはしますけど」
――でも、必要とされていることがうれしい?
「まあ、そうですね」
がっしりとした大きな体を少しすくめて、はにかんだ。

 2位タイガース、そして首位のカープに食らいつくには、左右のリリーバーのさらなる奮闘が欠かせない。
 灼熱の後半戦は今夜、横浜で幕を開ける。