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FOR REAL-in progress-

倉本寿彦――“光”となった指揮官の言葉

「FOR REAL-in progress-」
2017.5.15

 優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。
 “in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。

 早々と試合中止が決まった5月13日、降りしきる雨を見つめながら倉本寿彦は言った。
「全然ですよ。周りが気にし過ぎなんじゃないですか」
 9番という打順について質問されることにうんざりしているのでは、という問いに対する答えだ。表情は明るかった。

 1カ月前の4月14日、A.ラミレス監督は、学生時代に野手経験があるJ.ウィーランドのスイングの鋭さを買い、先発投手を8番打者に置いた。倉本の名前はその下に書き込まれた
「たしかにオーダー表を2回ぐらい確認しましたね。え、どこ? と思って……。でも状態もずっとよくなかったし、そこまで違和感はありませんでした。試合に出られてるだけでありがたかった」
 倉本は、開幕カードを無安打、打率0割で終えた。10試合をこなしてもヒットは4本しか生まれず、打率は1割1分台。凡打に終わるたび、スタンドのため息が重くのしかかった。
「正直、打つ手はなかった。どうすればいいかわからなかった」
 試合を終えて帰宅してからも、悶々とした。リセットしたくても、気がつけば野球のことが頭を占める。バットを持ち帰るのをやめ、テレビのスポーツニュースも見ないようにした。長く暗いトンネルの出口をなんとか自力で見つけようと、もがいた。
 たとえ微かでも、光が見えれば、前進への意欲は湧く。
 しかし、この時の倉本には微かな光さえも見えなかった。だから、監督に自ら申し出るべきだと思った。スタメンから外してください、と。
「そろそろ自分で言わないといけないと思っていました。迷惑をかけ過ぎてる。ちょっと自分でも我慢できないなと……」
 まさにその時だった。
 4月13日、試合前のバッティング練習中に指揮官が声をかけた。ラミレスは倉本の胸中を見透かしているかのように、バッティングの技術的なアドバイスと、そして心のアドバイスとを授けた。

 バッティングでは、ボールを捉えるポイントについて教えられた。より投手寄りのポイントで打つことを意識してはどうか。「自分では気づいていなかった」ことに気づかせてくれた言葉は、一つ目の小さな光となった。
 さらに、ラミレスは「心配することはない」と励ました。
明日は明日の風が吹く、今日はまた新しい一日だと。正直、ずっと引きずっているところはありましたし、すごく心に響きました。選手としてあるべき姿を教えてくれた。自分の座右の銘にしたいと思うぐらい、本当に助かった言葉でした
 この助言を境に、倉本のバッティングは徐々に復調へと向かう。
 何より、不調でも使い続けてくれる監督の信頼に応えたかった。
「監督がブレないでやってくれている以上は、ぼくがブレちゃいけない」
 苦悩の余り自ら引き下がろうとした消極的な心は消えていた。

 5月4日から再び9番の打順に入る試合が続き、7日に今シーズン初の猛打賞、11日のナゴヤドームでは値千金の同点2ランとなる第1号も飛び出した。
 ここまでの打席で最も印象に残っている一打は――。そう聞かれた倉本は、しばらく考え込んで、あの日の記憶に立ち戻った。
「この前のホームランもよかったけど、でも、やっぱり監督にアドバイスをもらった日のレフト前ですね。(タイガースの)藤浪投手から、追い込まれながらもレフト前に打ったんです。教えてもらった日に打てた、それがすごくうれしかったのでいちばん印象に残っています

  だが、打率2割2分台の現状で、復調したと言ってほしくはない。倉本は言う。
「まだ、立ち直っている途中です。監督の言葉ですごくプラスになれたし、いいリズムをつかんでいけるようにと思いながらやっています。状態が悪かった時から一つひとつ積み重ねてやってきて、それがちょっとずつ実を結んでいる。途中でいろんなことがあると思いますけど、最後にはいい結果が残せるようにしたい。どんなことがあっても負けないように、心が折れないように、一つひとつのプレー、一つひとつのものごとを大事に、スキなくやっていきたいと思っています」
 そこまで言い終えた時、雨はまだ降り続いていた。
 倉本の心も、いまだ晴れわたってはいないだろう。だが、雲の切れ間から陽光は差している。

 チームは、苦手とするタイガースに連敗を喫し、またしても勝率5割の壁に行く手を阻まれた。明日からはカープ、ジャイアンツと、上位チームとのカードが続く。
 2週間後に始まる交流戦を前に貯金をつくり、そして貯金をキープしたまま交流戦を終えるのが、指揮官の思い描くプランだ。
 優勝への道を切り開くために、昨季チーム最多安打を放った背番号5の復活は欠かせない。